相続・遺言の最新トピックス(2026年9月3日号・第9回)
2026年9月3日 青梅終活相談室
九月に入り、朝夕はいくらか過ごしやすくなってきました。夏の疲れが出やすい時期ですので、どうぞご無理のないようお過ごしください。今回は、身寄りのない方への支援が法律に位置づけられたこと、遺言や成年後見の大改正がいつから始まるのかの整理、お墓じまい(改葬)が過去最多になったこと、そして「遺贈」の書き方で結果が変わることを示した最高裁の判断、この4つのトピックをまとめてご紹介します。
制度改正1.おひとり様の支援が、法律に位置づけられました
「入院するときの手続きを誰に頼めばいいのか」「亡くなったあとの葬儀や納骨は誰がしてくれるのか」——おひとりでお暮らしの方から、いちばん多くいただくご相談です。これまでも、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業や成年後見制度、任意後見契約・死後事務委任契約、民間の終身サポートサービスといった支援はありました。ただ、日常生活の支援から入院・入所の手続き、亡くなったあとの事務までをひとつながりで担う事業については、法律上の位置づけが十分ではありませんでした。
2026年6月に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)で、その位置づけができました。新しくできるのは「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」という事業です。頼れるご家族などがいない高齢者の方や、判断能力に不安が出てきた方が対象で、こうした支援を行う事業が新たに第二種社会福祉事業として法律上位置づけられました。第7回でご紹介した国の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)は、あくまで事業者向けの手引きでした。今回は法律そのものが変わったという点で、大きな前進です。
知っておきたい3つのポイント
| どんな支援が受けられるの? | 大きく3つです。 ①日常生活の支援(お金の管理のお手伝い、福祉サービスを使うときの援助) ②入院・入所のときの手続きの支援(手続きのお手伝い、緊急連絡先になること) ③亡くなったあとの支援(死後事務支援)(葬儀・納骨、家財の片づけなどの手続き) |
|---|---|
| お金はかかるの? | この事業を行う事業者には、利用する方のうち一定の割合以上に、無料または低額でサービスを提供することが求められます。どなたでも一律に無料になるという制度ではありません。資力の要件や具体的な料金、利用の条件は、今後の省令や実際に事業を行う団体の定めによって決まります。 |
| いつから使えるの? | 法律は2026年6月25日に公布されました。この新しい事業の施行日は、公布から2年を超えない範囲で政令で定める日とされています(遅くとも2028年6月25日まで)。2026年9月現在、具体的な開始日はまだ決まっておらず、今すぐ利用できる制度ではありません。 |
新しい制度が始まるまでの間、民間のサービスを検討される方もいらっしゃると思います。その際は、①前払金がいくらで、どのように管理されるのか ②契約内容が書面になっているか ③解約したいときの条件と返金のきまり——この3点を必ずご確認ください。国のガイドラインに沿った運営をしているかどうかも、選ぶときの目安になります。まとまった金額を預けるお話ですので、その場で決めず、ご家族や第三者に一度見てもらうことをおすすめします。
制度改正2.遺言と成年後見の大改正、「いつから」を整理しました
第6回でお伝えした改正民法(令和8年法律第45号)は、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。電子データで作成し、法務局の所定の手続きによって保管してもらう「保管証書遺言」(いわゆるデジタル遺言)の新設、自筆証書遺言の押印をなくすこと、そして成年後見制度の見直しという、いずれも大きな内容です。ご自宅のパソコンでファイルを作って保存しておけばよい、というものではありませんので、その点はご注意ください。
「もう始まったのですか?」というお問い合わせをいくつもいただいていますが、いずれもまだ施行されていません。法律は公布されても、実際に効力を持つ日(施行日)は別に定められます。下の表の日付は法律で決められた「遅くともこの日までに施行する」という期限で、実際の施行日はこれから政令で決まります。
知っておきたい3つのポイント
| 遺言の押印が任意に | 公布の日(2026年6月24日)から1年を超えない範囲で、政令で定める日から。遅くとも2027年6月24日までに施行されます。 |
|---|---|
| 保管証書遺言(デジタル遺言)の新設 | 公布の日から3年を超えない範囲で、政令で定める日から。遅くとも2029年6月24日までに施行されます。3つのなかでは、いちばん先の話になります。 |
| 成年後見制度の見直し | 公布の日から2年6か月を超えない範囲で、政令で定める日から。遅くとも2028年12月24日までに施行されます。「後見」「保佐」をなくし「補助」に一本化する、大きな見直しです。 |
終活全般3.お墓じまい(改葬)が過去最多に。費用と手間の実際
お骨を別の場所へ移すことを「改葬(かいそう)」といいます。いわゆる「お墓じまい」をすると、この改葬の手続きが必要になります。厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、行政に報告された改葬の件数は近年大幅に増えており、2024年度(令和6年度)は約17万6千件と、過去最多を更新しました。2021年度は約11万9千件でしたので、3年で1.5倍近くになった計算です。なお、この数字はあくまで行政上の改葬の件数で、お墓の撤去や墓地の返還の件数と必ずしも一致するものではありません。
また、鎌倉新書が2026年3月17日に発表した「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」では、実施したことがあると答えた方が45.2%でした(前回調査は39.9%)。ただしこの調査は、同社のサービスを通じて資料請求や見学をし、改葬・墓じまいを検討または実施したことのある733人を対象にしたものです。世の中全体でお墓じまいをした方の割合を示すものではありませんが、実際に動いている方の実感を知る手がかりにはなります。理由として多いのは「お墓が遠くて通えない」「お墓を継ぐ人がいない」でした。
知っておきたい3つのポイント
| 移し先は「継ぐ人が要らない形」が主流 | 同調査では、移し先として継承者の要らない永代供養(合祀・合葬)を選ぶ方が最も多くなりました。次の世代に負担を残したくない、というお気持ちのあらわれです。 |
|---|---|
| 費用は「31万〜70万円」が最多 | 同調査では、この価格帯が最も多く、およそ半数の方が70万円以下で完了していました。一方で、墓じまいを断念した方の理由でいちばん多かったのも「費用の高さ」です。お墓の場所や大きさで金額は大きく変わりますので、まずお見積りを複数とることをおすすめします。 |
| 手間がかかるのは「移し先選び」と「役所の手続き」 | 同調査では、実施中の方が困ったこととしてこの2つが上位に挙がりました。改葬には、いまのお墓がある市区町村の「改葬許可証」が必要です。法令上、基本となる添付書類はいまの墓地・納骨堂の管理者が作成した「埋葬(埋蔵・収蔵)の事実を証する書面」で、これに加えて移し先の受入証明書などを求める自治体もあり、地域差があります。まず市区町村の窓口でご確認ください。 |
判例・事例4.「遺贈します」と書いた分を辞退されたら、どうなる?
遺言では、相続人ではない方——お世話になった方、甥ごさん・姪ごさん、お世話になった団体など——に財産を譲ることができます。これを「遺贈(いぞう)」といいます。とくに「遺産の3分の1を◯◯さんに」というように割合で指定する遺贈を、法律では「包括遺贈(ほうかつ いぞう)」と呼びます。
ここで問題になるのが、もらう側は遺贈を辞退(放棄)できるという点です。では、辞退された分はどこへ行くのでしょうか。この点について、最高裁判所は2023年(令和5年)5月19日に、はっきりとした判断を示しました。
知っておきたい3つのポイント
| どんな事案? | 亡くなった方が、お孫さん2人にそれぞれ「3分の1」「6分の1」を遺贈する遺言を残しました。ところが一方のお孫さんが遺贈を辞退。その「6分の1」が、もう一方のお孫さんのものになるのか、それとも相続人(お子さんたち)のものになるのかが争われました。 |
|---|---|
| 最高裁の判断は? | 遺言者が別段の意思を表示していない限り、辞退された分はほかの受遺者ではなく、相続人に渡るとしました。民法995条にいう「相続人」に、包括受遺者(割合で遺贈を受けた人)は含まれない、という理由です。 |
| 私たちへの教訓は? | 遺言にあらかじめ別の定めを書いていれば、そちらが考慮されます。「◯◯が受け取らないときは△△に」といった予備的な定めを置いておくことで、ご自身の希望を反映できる場合があります。何も書いていなければ、思っていたのとは違う方のところへ渡ることがある、ということです。 |

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