相続・遺言の最新トピックス(2026年5月20日号・第2回)

トラブル・注意喚起

こんにちは。先週の第1回では、相次ぐ「制度改正」をまとめてお届けしました。今回はテーマを広げて、身近に起こりやすい相続トラブル・終活の準備・最近の判例 など、お客様ご自身やご家族のこれからに直結する話題を取り上げます。

判例・事例1.「10年後に見つかった遺言書」最高裁が初判断

亡くなった方の遺品整理を進めるなかで、相続が終わってから何年も経って遺言書が出てきた──そんなケースについて、最高裁判所が初めての判断を示しました。

争点となったのは、法定相続人が話し合いで不動産を相続し登記まで済ませたあと、10年以上経ってから別の内容の遺言書が見つかった という事案です。最高裁第3小法廷は、「すでに行われた相続による取得は、後から出てきた遺言書によって妨げられない」と判断しました。

ここがポイント: 遺言書には強い効力がありますが、「時間が経ちすぎてから出てきた場合」には限界もあるということが、最高裁レベルで明らかになりました。逆にいえば、「遺言書はあるけれど、家族の誰も気づいていない」という状態は危険です。遺言書を作るときには、保管場所を信頼できる方に必ず伝えるか、法務局の 自筆証書遺言書保管制度 を使うことを強くおすすめします。

トラブル・注意喚起2.「介護をした分は多めにもらえるはず」をめぐる兄弟ゲンカ

家庭裁判所で扱われた遺産分割事件は、令和6年で 15,000件を超え、20年前の約1.7倍にまで増えています。資産家のご家庭だけの問題ではなく、ごく普通のご家庭でも頻発しているのが現実です。

典型的なケース

  • 長女が同居して長年お母様の介護を担ってきた
  • 他の兄弟は遠方に住み、たまに帰省するだけだった
  • お母様の死後、長女が「介護した分を多めにほしい」と主張
  • 他の兄弟は「法律どおり平等に分けるべき」と反発

法律上は、被相続人に対して特別な貢献をした相続人には 「寄与分」として遺産を多めに取得できる仕組みがあります。ただし、寄与分を主張するには介護日数や費やした金銭の記録 が重要で、「親孝行だから当然」というだけではなかなか認められません。

未然に防ぐコツ: 介護を担う方が1人に偏っているご家庭では、生前のうちに「遺言書で介護してくれた子の取り分を多めに指定しておく」だけで、相続後の兄弟関係がぐっと穏やかになります。寄与分の交渉に長い時間をかけるより、はるかに費用も負担も少なくて済みます。

終活全般3.法務省&日本司法書士会の「無料エンディングノート」

意外と知られていませんが、法務省と日本司法書士会連合会が共同で、エンディングノートを無料配布しています(法務省の不動産登記推進キャラクター「トウキツネ」が表紙の冊子です)。

市販のエンディングノートと違い、「相続・遺言・成年後見」など法律手続きで家族が困らないために必要な項目が中心に整理されています。具体的には次のような項目です:

  • 所有している不動産の所在・登記名義の状況
  • 預貯金・有価証券・保険など財産の一覧
  • かかりつけの医療機関・常用薬
  • 葬儀・お墓・遺品整理について
  • 家族に伝えておきたいこと
はじめての1冊として最適: 「終活を始めたいが、市販のエンディングノートはどれを選んでいいかわからない」という方は、まずこの公的なノートから書き始めると安心です。法務局の窓口や、全国の司法書士会で入手できるほか、PDF版も公開されています。当事務所でも書き方のご相談を承っております。(不動産登記が必要な場合は、提携の司法書士と連携してサポートいたします)

終活全般4.「家族信託」とは ── 認知症になってからでは遅い対策

最近、相続対策の選択肢のひとつとして注目されているのが 「家族信託(民事信託)」という仕組みです。ご本人がお元気なうちに、信頼できるご家族(多くはお子様)に財産の管理を任せる契約 を結んでおく、というものです。

遺言や成年後見と何が違う?

遺言書亡くなった「後」の財産の行き先を決める
成年後見判断能力が低下した「後」、家庭裁判所が選んだ後見人が財産管理を行う
家族信託判断能力が低下する「前」に、信頼するご家族へ管理を委ねておける
認知症になってから「では遅い」のはなぜ? 判断能力が落ちてしまった後では、ご本人名義の不動産の売却や、定期預金の解約が事実上できなくなります。成年後見人がついても、財産の処分には家庭裁判所の許可が必要となり、自由度が大きく下がります。家族信託は、こうした「資産が動かせなくなる前」に手を打っておくための制度です。

一方で、家族信託は契約書の設計に専門知識を要し、信頼できるご家族の存在が前提となります。「うちは家族信託が向いているのか、遺言で十分なのか」というご相談も増えております。

制度改正・法改正5.令和8年度税制改正大綱 ── 賃貸物件をお持ちの方は要チェック

前回の号でも少し触れましたが、令和8年度(2026年度)税制改正大綱 には、相続税対策に大きな影響を与える内容が盛り込まれました。今週はその中身を、もう少しかみ砕いてご紹介します。

変更①:相続開始前5年以内に取得した賃貸用不動産は「時価評価」へ

これまでは、賃貸アパートやマンションを建てると相続税評価額が大きく下がるため、駆け込みで建築するケースが目立っていました。今後は 「亡くなる前の5年以内に取得した賃貸用不動産」については、原則として時価で評価される見込みです。

変更②:不動産小口化商品も時価評価に

複数人で都心の一棟物件などに共同で出資する「不動産小口化商品」も、相続税評価額が 時価評価 に統一される予定です。

これから相続対策を考える方へ: 「いま、駆け込みで賃貸物件を建てれば節税になる」という従来の常識は通用しなくなります。適用開始は 2027年1月1日以降の相続・贈与 から。すでに賃貸物件をお持ちの方も、所有期間や家族の状況に応じて、相続のシミュレーションを早めに行うことをおすすめします。(提携税理士と連携したシミュレーションも可能です)

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