相続・遺言の最新トピックス(2026年6月22日号・第6回)

トラブル・注意喚起

相続・遺言の最新トピックス

2026年6月22日号(第6回)

こんにちは。6月も下旬となり、本格的な夏が近づいてきました。 今回は、6月17日に成立したばかりの大きな法改正のニュースを中心に、 「改正民法の成立(デジタル遺言の創設・自筆証書遺言の押印廃止)」「実家を共有名義にする落とし穴」「生前贈与の新ルール(2024年〜)」「亡くなった方の預貯金をめぐる最高裁の判例変更」 の4本を、わかりやすくまとめてご紹介します。

制度改正・法改正1.改正民法が成立 ── パソコン・スマホで作る「デジタル遺言」が創設、自筆証書遺言は押印が不要に

2026年6月17日、遺言制度のデジタル化と成年後見制度の見直しを盛り込んだ改正民法が成立しました。 過去の号でも「閣議決定」や「法案段階」としてお伝えしてきた内容が、いよいよ正式に法律として決まったことになります。

今回の改正の2つの目玉

「保管証書遺言」(デジタル遺言)の創設パソコンやスマートフォンで作成した遺言データを 法務局で保管 できる新しい制度です。全文を手書きする必要がなく、押印も不要。法務局が身分証や対面・ウェブ会議で本人確認を行い、あらかじめ指定した人へ遺言の存在を通知する仕組みが予定されています
自筆証書遺言の「押印廃止」これまでどおり 全文・日付・氏名を自分で書く要件は残ります が、長く必須とされてきた 押印(ハンコ)の要件が廃止 されます

施行は 公布から3年以内 とされており、実際に使えるようになるのは数年先の見込みです。 あわせて成立した 成年後見制度の見直し(「後見」「保佐」を「補助」に一本化するなど。第5回でご紹介しました)は、2028年度中の施行が見込まれています。

「今すぐ遺言を残すなら」、引き続き公正証書遺言が安心です: デジタル遺言は 施行が数年先 で、細かいルールはこれから定められます。 紛争の予防や確実性を重視する方は、現時点では 公正証書遺言 が引き続き中心的な選択肢です。 一方で、「手書きが負担で遺言をあきらめていた」「高齢で長い文章を書くのがつらい」という方にとっては、 将来の有力な選択肢が一つ増えることになります。

相続トラブル事例2.「とりあえず兄弟で共有」が一番危ない ── 実家を共有名義にする落とし穴

遺産分割の話し合いがまとまりきらず、実家などの不動産を、法定相続分どおり「共有名義」のままにしておく というケースがあります。一見すると公平で円満な解決に見えますが、実は 将来の大きな火種 になりがちです。

共有名義のよくある落とし穴

売る・貸す・建て替えに全員の同意が必要共有不動産の売却や大きな変更には 共有者全員の合意 が必要です。一人でも反対したり、音信不通だったりすると、前に進められません
相続のたびに共有者が増える共有者の一人が亡くなると、その持分はさらに相続人へ。世代を経るごとに ねずみ算式に権利者が増え、会ったこともない遠縁と話し合う事態に(数次相続)
固定資産税は連帯して負担共有者は固定資産税を 連帯して負担 します。実際には住んでいない人にも負担が及びます
結局「塩漬け」になりやすい誰も自由に使えず・売れず、空き家のまま放置 されてしまうケースが少なくありません
「あとで決めればいい」が通じにくい時代に: 2023年4月施行の民法改正で、所在不明の共有者がいる場合などに 裁判所の関与で持分を取得・譲渡したり管理したりできる 仕組みは整いました。ただし、いずれも 手間も費用もかかる 手続きです。 さらに2024年からは相続登記が義務化されており、「とりあえず共有で登記して先送り」という対応は、年々リスクが高まっています。
予防のポイント ──「共有」は問題の先送り: できる限り、遺産分割で「単独所有」に しておくのが安心です。 一人が不動産を取得し、他の相続人には金銭で精算する 「代償分割」 も有効な方法です。 また、生前に 遺言で「この不動産は誰に」と承継先を決めておく ことで、共有のままになるのを防げます。

終活の豆知識3.生前贈与の「新ルール」をご存じですか ── 2024年から「7年持ち戻し」に

コツコツと 生前贈与 で財産を渡していくのは、相続税対策の定番です。 ところが2024年(令和6年)から、そのルールが大きく変わりました。生前贈与をお考えの方は、ぜひ知っておいてください。

2024年からの2つの変更点

暦年贈与の「持ち戻し」が3年→7年に毎年110万円までの非課税枠を使う「暦年贈与」でも、亡くなる前の一定期間の贈与は相続財産に足し戻して 相続税を計算します(持ち戻し)。この期間が 3年から7年へ延長。2024年1月以降の贈与が対象で、段階的に延び、2031年以降の相続で完全に7年分となります(延長された4年分の贈与は合計100万円まで加算しません)
相続時精算課税に「年110万円の非課税枠」「相続時精算課税」を選ぶと、2024年から 毎年110万円までの基礎控除 が新設されました。この110万円分は贈与税がかからず、相続時の持ち戻しも不要 です
「早めの贈与ほど効果的」になりました: 7年ルールにより、亡くなる直前の「駆け込み贈与」は相続財産に戻されてしまいます。 相続税対策として贈与を考えるなら、元気なうちから計画的に 進めることがこれまで以上に大切です。 「暦年贈与」と「相続時精算課税」のどちらが有利かは、ご家族の構成や財産の状況によって異なります。 当事務所では、提携の税理士と連携 して、おひとりおひとりに合った方法をご案内します。

裁判例の紹介4.「亡くなった親の預金が、すぐには下ろせない」 ── 最高裁が変えた相続の常識

かつては、「亡くなった方の預貯金は、相続が始まると同時に、法定相続分どおりに自動的に分かれる」 と考えられていました(平成16年の最高裁判例)。この考え方では、預貯金は遺産分割の話し合いを待たずに、 各相続人が自分の取り分を引き出せる、とされていたのです。

最高裁大法廷 平成28年12月19日決定

ところが最高裁判所大法廷は、2016年(平成28年)12月19日の決定で、この判例を 変更 しました。 「共同相続された預貯金は、当然には分割されず、遺産分割の対象になる」 と判断したのです。 その結果、遺産分割が終わるまで、相続人が一人で勝手に預金を引き出すことは原則できなくなりました。 銀行が「遺産分割協議書を持ってきてください」と求めるのは、このためです。

困ったときの「仮払い制度」を知っておきましょう: これでは葬儀費用や当面の生活費に困ってしまう ── そんな不便を補うため、2019年から 「遺産分割前の払戻し(仮払い)制度」 が設けられました。 各口座の残高 × 3分の1 × その相続人の法定相続分(1つの金融機関あたり上限150万円)までは、 遺産分割を待たずに、各相続人が単独で引き出せます。葬儀費用などに活用できる制度です。
ご注意ください: 仮払い制度で引き出したお金は、最終的に その相続人が受け取る遺産の一部 として扱われます。 また、引き出しには 戸籍一式や本人確認書類 が必要で、金融機関ごとに手続きが異なります。 「とりあえず下ろして使ってしまった」と、後の遺産分割でトラブルになることもあるため、 引き出す前に、使いみちや金額を相続人どうしで共有しておく ことをおすすめします。

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