相続・遺言の最新トピックス(2026年6月15日号・第5回)

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相続・遺言の最新トピックス

2026年6月15日号(第5回)

(2026.06.22更新)

こんにちは。梅雨に入り、お家で過ごす時間が長くなる季節となりました。 こうした時期は、ご家族との会話や、お部屋の片付け・書類の整理に向き合う絶好の機会でもあります。 今回は、「成年後見制度の大改正」「家庭裁判所の遺産分割事件が25年で1.7倍」「梅雨にこそ進めたい書類整理」「相続放棄の『熟慮期間』をめぐる最高裁判例」 の4本を、わかりやすくまとめてご紹介します。

制度改正・法改正1.成年後見制度が大きく変わります ──「終身利用」から「必要な時だけ」へ

2026年4月3日、政府は 成年後見制度を大幅に見直す民法改正案 を閣議決定し、2026年6月17日に改正民法として正式に成立しました。 2000年の制度開始以来、26年ぶりの大改正となります。 現在の制度には「一度始めると本人が亡くなるまで止められない」「使いにくい」といった声が多く、 今回の改正は、利用者の声に応えた 「オーダーメード型」 への転換が大きな柱となっています。

主な変更点

終身制の廃止これまで原則として 本人が亡くなるまで続く 仕組みでしたが、改正後は 家庭裁判所の判断で途中終了できる 規定が新設されます
期間設定の導入あらかじめ利用期間を定めて、期間満了で終了 できる仕組みが導入されます(「とりあえず3年だけ」といった使い方が可能に)
3類型から「補助」に一本化「後見」「保佐」「補助」の3類型を、最も柔軟な 「補助」に一本化 し、本人の判断能力に応じた支援内容にしていく方向
本人の意思尊重の強化本人の意思や、能力回復の状況に応じた、より柔軟な対応を可能に
「使いたい時に、必要な分だけ」が現実に: たとえば「父親が一時的に判断能力が低下したので、施設入所の手続きや不動産の処分だけ後見人にお願いしたい」 といった 場面限定の利用 がしやすくなります。 施行は公布から2年6か月以内とされており、2028年度中の施行が見込まれます。 ご家族の判断能力に不安があるけれども「後見制度はちょっと…」と二の足を踏んでいた方にとって、 大きな選択肢の広がりとなりそうです。

相続トラブル事例2.家庭裁判所の遺産分割事件が25年で1.7倍 ──「うちは大丈夫」が一番危ない

令和6年度の司法統計によると、全国の家庭裁判所が取り扱った 遺産分割事件は15,379件 に上り、平成12年(8,889件)と比較すると 約1.7倍 に増えています。 「相続でもめるのは資産家だけ」というイメージは、もはや過去のものになりつつあります。

なぜ「普通のご家庭」でもめるようになったのか

  • 核家族化で、相続人同士の日頃の付き合いが減っている
  • 長年の 「長男が家を継ぐ」という前提が崩れた 一方、ルールが曖昧
  • 不動産(特に実家)が 分けにくい財産 として残るケースが多い
  • 親の介護を担った相続人と、そうでない相続人との 負担感の差
  • 遠方に住む相続人との 連絡・調整の困難
もめる原因の多くは「金額の大小」ではありません: 家庭裁判所の統計を分析すると、遺産分割でもめる事件の約3分の1は、遺産総額が1,000万円以下 のご家庭で起きています。むしろ、「分けにくい実家」と「わずかな預貯金」という構成が、 最ももめやすいパターンです。「うちは財産が少ないから大丈夫」と油断するのが一番危険、 と言われる理由がここにあります。
予防の第一歩は「対話」と「遺言」: もめる相続の多くは、生前にご家族で 「誰がどこに住むか」「実家をどうするか」「介護をどう分担するか」 といった話し合いがされていないことが背景にあります。お盆や年末年始など、家族が集まる機会に 少しずつ話題にしてみることが大切な準備となります。 そのうえで 遺言書を残しておく ことで、ご本人の意思を明確に伝えることができます。

終活の豆知識3.梅雨こそ「書類整理」のチャンス ── 雨の日の小さな終活

6月の梅雨どきは、外出の機会が減り、お家で過ごす時間が長くなる季節。 そんな時期にこそ、ぜひ取り組んでいただきたいのが 「重要書類の棚卸し」 です。 エンディングノートを最初から完璧に書く必要はありません。 まずは 「何が、どこにあるか」を整理する だけでも、ご家族の将来の負担を大きく減らせます。

梅雨の時期にチェックしておきたい5つの書類

① 通帳・キャッシュカード使っていない口座はないか、ネット銀行のログイン情報はメモしてあるか
② 保険証券生命保険・医療保険・火災保険の証券をひとまとめに。受取人の指定が古いままになっていないか 確認
③ 年金関係書類年金手帳・通知書をひとつのファイルに。厚生年金と国民年金の加入歴 をまとめておく
④ 不動産関係書類登記識別情報(権利証)・固定資産税の納税通知書・登記簿の最新情報
⑤ デジタル資産のメモスマホ・パソコンのパスワード、サブスク契約の一覧(解約に必要)
湿気対策もお忘れなく: 大切な書類は、湿気の少ない場所に、ファイルにまとめて保管 しましょう。 押し入れの奥や床下収納は、梅雨どきにカビが発生しやすい場所です。 クリアファイルや防湿ケース に入れて、リビングの引き出しなど目につく場所に置くのがおすすめ。 お亡くなりになった後、ご家族が探さなくて済む場所 に保管することが何より重要です。
「ひとつのノートに集約」が最強: エンディングノート(市販品でも手作りでも可)を1冊用意し、 「書類の所在地マップ」 として活用するのが効果的です。 「銀行通帳 ─ 寝室のタンスの上から2段目」のように、具体的な保管場所を書き残しておけば、 いざという時、ご家族が困りません。

裁判例の紹介4.相続放棄は「3か月過ぎても」できることがある ── 最高裁判決と「熟慮期間」のはなし

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」 に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法第915条)。この3か月を 「熟慮期間」 といいます。「亡くなって3か月過ぎたから、もう放棄できない」と思い込んでしまう方が多いのですが、 実はそうとも限らない ことを示した重要な最高裁判例があります。

昭和59年最高裁判決(昭和59年4月27日)

この判決は、「相続人が、相続財産も債務もまったく無いと信じ、そう信じることに相当な理由があった場合」 には、3か月の熟慮期間は 「相続財産(または債務)の存在を知った時、または通常知ることができた時」 から起算されると判断しました。

たとえば、こんなケースで活用できる可能性があります:
  • 父が亡くなって5年。突然、保証人になっていた借金の請求書が届いた
  • 長年疎遠だった親族が亡くなり、半年後に 連帯保証債務の存在を知った
  • 母の死後、相続財産は何もないと思って手続きをしていなかったが、後から 多額の借金が発覚
こうしたケースでは、「債務の存在を知ってから3か月以内」 に手続きをすれば、 相続放棄が認められる可能性があります。
ただし、無条件ではありません: この特例が認められるには、「相続財産・債務がないと信じたことに『相当な理由』があった」 ことを家庭裁判所に説明する必要があります。被相続人と長年疎遠だった (生活実態を知る機会がなかった)、遺産分割協議や預貯金の引き出しに関わっていなかった といった事情を、客観的な資料とともに示すことが重要です。
また、相続財産の 一部でも処分(売却・名義変更・債務の弁済等)してしまうと、 「単純承認」とみなされて放棄ができなくなることにもご注意ください。 急に債務が発覚した場合は、何かを動かす前に、まずご相談ください

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