「一生終わらない」から
「終われる後見」へ。
成年後見制度が26年ぶりに大改正
認知症などで判断能力が不十分になった方を支える「成年後見制度」。
これまで指摘されてきた“使いにくさ”を解消する改正民法が、ついに成立しました。改正前と改正後を、イラストで分かりやすく比べてみます。
この記事のポイント
- 「後見」「保佐」「補助」の3類型を「補助」に一本化。必要なところだけ手伝ってもらう“オーダーメイド型”へ。
- 亡くなるまで続いた終身制を廃止。目的が済めば家庭裁判所の判断で途中で終了できるように。
- 相性が合わないときなど、後見人の交代もしやすくなります。
- 施行は公布から2年6か月以内(おおむね2028年度中の見込み)。今すぐ制度が変わるわけではありません。
なぜ、見直されたのか
高齢化で必要性は高まる一方、利用者は伸び悩んできました。背景にあった「3つの使いにくさ」です。
改正前 → 改正後を比べてみる
主な変更は4つ。左がこれまで(改正前)、右がこれから(改正後)です。
「終わらない後見」から「終われる後見」へ
本人の判断能力が回復しない限り、原則として亡くなるまで利用が続く事実上の終身制。報酬も払い続けることに。
目的を達成し保護の必要がなくなったと家庭裁判所が認めれば、途中で終了が可能に。ご家族からの終了の申立ても想定されています。
3つの類型を「補助」に一本化
判断能力の程度で「後見・保佐・補助」の3つに区分。権限が大きい「後見」では本人の行為が幅広く制限されました。
「後見」「保佐」を廃止し「補助」へ一本化。必要な事項だけを代理・同意してもらう、本人本位の仕組みに。
「一律」から「オーダーメイド」の支援へ
包括的な代理権で、本人が望まない日常の財産管理まで広くカバー。自己決定権が必要以上に制約される面がありました。
必要な行為だけをピンポイントで支援。後見人へ権限を与える際は、原則として本人の同意が必要になります。
後見人の交代がしやすくなる
辞任や、不正など重大な事情がない限り交代は困難。「相性が合わない」程度では、不満があっても替えられませんでした。
本人の利益のために必要なときは、事情に応じて交代が認められる方向に。状況に合った支援者を選び直せます。
身近な例で見ると
相続の現場で、いちばん変化を実感しやすい「遺産分割」のケースです。
判断能力が不十分なお母さまが参加しない遺産分割協議は無効になるため、後見人を選んで代わりに参加してもらう必要があります。ここで改正前後の差が出ます。
遺産分割のためだけに始めても、協議が終わった後も後見は続きます。その後ずっと、日常の財産管理まで後見人に委ね、報酬も払い続けることに。「一生のことになるなら…」とためらう家族が多くいました。
「遺産分割協議の完了まで」と目的を定めて利用。協議がまとまり財産の分配が済めば、後見を終了できる可能性が生まれます。その後の暮らしは、これまで通りご家族が見守る——メリハリのある使い方ができます。
いつから変わるの?
法律は成立しましたが、実際に新しい使い方ができるのは少し先です。
- 2026年4月3日改正案を閣議決定し、同日に国会へ提出
- 2026年6月17日改正民法が参議院本会議で可決・成立
- 公布から2年6か月以内(おおむね2028年度中の見込み)新しい成年後見制度がスタート。施行までにシステム整備や運用ルールづくりが進みます
※「期間を区切って利用したい」という申立てが実際にできるようになるのは、おおむね2年後の見込みです。すでに後見・保佐を利用中の方についても、新制度の「補助」への移行や終了の申立てができる方向が示されています。
今、知っておきたい注意点
「自由に」やめられるわけではありません。「終われる後見」といっても、家族の都合で随意に終了できるものではなく、家庭裁判所が「保護の必要性がなくなった」と認めることが条件です。
今すぐ制度が変わるわけではありません。施行は数年先。判断能力が低下してから慌てないために、お元気なうちにできる任意後見契約や見守りの備えは、改正後も引き続き有効です。
家族信託など他の手段との比較も大切に。柔軟性が増す一方、身上保護(施設入所などの契約)が必要な場面では後見が向きます。ご家庭の状況に合わせた組み合わせの検討を。
あわせて「デジタル遺言」も導入されました
今回の改正民法には、パソコンなどで作成した遺言書を法務局が保管する「保管証書遺言(デジタル遺言)」の新設も盛り込まれています。全文手書きが原則だった自筆証書遺言の負担をやわらげるもので、こちらは公布から3年以内の施行予定。「生きている間の安心(成年後見)」と「亡くなった後の安心(遺言)」を、より柔軟に準備できるようになります。


コメント